二次創作をとりまく問題

イラスト日常

二次創作に関する話題

最近、二次創作にまつわる話題が見られた。
主に「二次創作の立ち位置」「二次創作におけるガイドライン」の2件。

前者はコスプレによって発生した話題であり、後者はある作品の公式がガイドラインを明示したもの。
今回の記事ではこれらについて触れる。

コスプレイヤーの発言から話題になった二次創作の立ち位置

あるコスプレイヤーが特定の会場でコスプレをしたことで、二次創作に関する権利問題が話題となった。

その場所はコスプレを禁止してはいなかったのだが、「こういった公の場でのコスプレのお披露目はその作品や作者に対する著作権侵害となり得る」といった意見で殆どを占められ、コスプレイヤーが猛バッシングを受けていた。

この辺に関しては、二次創作そのものがグレー的存在であり、作品の作者が著作権侵害と認めた場合に侵害行為にあたるという認識(親告罪)で通っているので、今回の「会場でコスプレを行った」ということに限れば、作品側と会場側の双方がコスプレをこういった状況やその他で禁止していなければ、それほど問題はないように思える。

だが、本件の問題点はここから。
問題となったコスプレイヤーは、この炎上騒動の中で火に油を注ぐような持論を次の通りに唱えている。

  • キャラをお借りする」という言葉が、生理的に嫌い
  • 原作者(一次創作側)は、二次創作者に敬意を払うべき

といったもの。
この発言に関しては看過することはできないといった声は非常に多く、自分も一クリエイターとしてこの発言を受け入れることは到底できない

まず、二次創作は一次創作が存在しなければ成り立つことはあり得ない
一次創作はその作品の原作者(一次創作クリエイター)が「著作権」を有しており、それは作品における絶対的頂点に位置する存在を意味する。
その性質上、どの基準で他人に使わせるのかなどは全て一次創作クリエイターが決めることであり、一次創作クリエイターは一次創作物の「管理者権限」を有する。

そして、その一次創作物を使って第三者がファンアートやコスプレなどを作る行為を二次創作と言い、その二次創作物を作る者が二次創作者となる。
したがって、著作権・管理者権限を持つ一次創作クリエイターのお目こぼしの下で、その人の作品を利用させていただく、という立場になるのが二次創作者となる。

もうこの時点で分かると思うが、一次創作物&一次創作クリエイターと二次創作&二次創作者は決して同列などではない。作品に関する両者の権利の違いから、決して同列であってはならない
二次創作&二次創作者は明確に一次創作物&一次創作クリエイターの遥か下に位置しており、そうでなければならない。
なんだったら、二次創作を行っていない一般の利用者よりも、二次創作&二次創作者は下の立場にあるといえる。なぜなら、一般の利用者は一次創作物・一次創作クリエイターの作品そのものを楽しんでおり、一次創作とは異なる非公式の二次創作によって一般の利用者に迷惑をかけてはならないため。
ましてや、上の立場にある一次創作物&一次創作クリエイターが、下の立場にある二次創作&二次創作者に敬意を払う必要などどこにもない
寧ろ、こうした明確な上下関係から、二次創作&二次創作者は一次創作物&一次創作クリエイターに対し謙虚であるべき

また、作品に関する権利を持っているのは、その作品を作り出した一次創作クリエイター(原作者)である。
であるにも拘わらず、「キャラをお借りする」と認識したくない、原作者も二次創作者に敬意を払うべきなどと言い放つことは、一次創作クリエイターの作品を私物化していることと同義であり、或る意味では作品の盗用といえる。
人様が生み出した作品に対し「お借りする」と言えない状態でそれを利用する姿は「盗人」そのもの。

したがって、二次創作者は一次創作クリエイター(原作者)に対し、

  • 最大限の敬意を払って
  • 作品をお借りさせていただき
  • 謙虚に立ち振る舞わなければならない

といった姿勢・意思を持って二次創作を行うことが当然だろう。
これが理解できないのあれば、二次創作をするのはやめた方がいい
自分の思うとおりにやりたいのであれば、それは自分が一次創作クリエイターとなって自分の作品を作って展開すればいいだけの話。

これは後述のガイドライン問題にも当てはまることではある。

二次創作におけるガイドラインの明文化が顕著に

これに関しては、以前の記事(アニメのスクリーンショットをSNSに貼り付ける著作権侵害行為)で触れているが、幾つかの権利者が明文化をし始めたので、改めて触れる。
因みに以前に記事は下記。


上記の記事では、あるアニメのエピソードで取り上げられた著作権問題と制作側のガイドラインについて触れていた。

そのアニメとは別に、最近になって二次創作におけるガイドラインを明文化する作品が幾らか出てきている。
その一部を以下で取り上げる。

プリンセッション・オーケストラ

プリンセッション・オーケストラ
オリジナルTVアニメ「プリンセッション・オーケストラ」2025年4月6日 日曜あさ9時00分よりテレ東系列6局ネットにて放送開始!


※当該ガイドラインにおいて、本作品を基に個人の感情などを込めて創作することを「二次創作」、二次創作物を公表・頒布することを「ファン活動」と定義
※当該ガイドラインは、非営利で活動する個人向け

二次創作の創作物における実質禁止行為
  • 当該作品のイメージを著しく損なう表現や公序良俗に反する内容
  • 反社会的・差別的表現、暴力的・グロテスク・性的描写いずれか、或いは全てを含むもの
  • 飲酒・喫煙・賭博、その他未成年の成長に悪影響を与える可能性のあるもの
  • 特定の政治・宗教・信条を過度に支援する、または貶めるもの
  • 第三者の考え方や名誉などを害する、または第三者の権利を侵害しているもの
  • 公式と詐称、または公式と誤解・誤認されうるもの
ファン活動における禁止行為
  • 当該作品の二次創作物の販売で利益を得ることは禁止
    (但し、制作にかかる原材料費等を大きく上回らない対価を得る頒布非営利の範囲とみなす)
  • 当該作品のキャラクターやデザインを基にしたフィギュア・コスプレ衣装・グッズ等の立体物は頒布禁止
  • 当該作品の二次創作物を使用・着用した入場料等を徴収するイベントの主催は禁止
二次創作・ファン活動における留意事項
  • 二次創作・ファン活動は自己責任(これにより発生したトラブルは製作委員会は一切責任を負わない)
  • 当該作品に関わるクリエイターや他のファンに敬意を払い、他者の権利を尊重した活動をすること
  • ガイドラインの内容に違反している、もしくは製作委員会が不適切と判断した二次創作に関しては、公表の中止・削除を求める場合がある
  • ガイドラインの内容は予告なく変更する場合があり、変更によって損害が生じても製作委員会は一切責任を負わない

ウマ娘 プリティーダービー

二次創作ガイドライン|ウマ娘 プリティーダービー 公式ポータルサイト|Cygames
ウマ娘 プリティーダービー公式ポータルサイトです。メディアミックスコンテンツ『ウマ娘 プロジェクト』に関する情報をお届けします。

※モチーフとなる競走馬のファンの皆様や馬主の皆様、および関係者の方々が不快に思われる表現、ならびに競走馬またはキャラクターのイメージを損なう表現は行わないようにすること

二次創作の創作物の公開・利用における実質禁止行為
  • 当該作品、または第三者の考え方や名誉などを害する目的のもの
  • 暴力的・グロテスク・性的描写いずれか、或いは全てを含むもの
  • 特定の政治・宗教・信条を支援する、または貶めるもの
  • 反社会的な表現のもの
  • 第三者の権利を侵害しているもの
  • 商業利用または営利を目的とするもの(所謂「同人活動」の範囲を超えるもの)
  • その他、ガイドラインの趣旨に照らし不適切なもの

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク

公式生放送でプロデューサーらからも丁寧に触れられ、「道徳配信」と呼ばれたこともある。
最近になって明示されたものではないが、ピアプロキャラクターを含めた二次創作ガイドラインの参考としてはよく出来ているので、念のため。

なお、プロセカの楽曲はボカロPによって提供されているため、立ち位置としてはプロセカはボカロPより下にある。

プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク
セガ×Craft Egg/Colorful Paletteが贈る、新作スマホゲームプロジェクト「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」の公式サイト

※以下は抜粋だが、公式のガイドラインページを熟読すること。

ピアプロキャラクターズの二次創作について

プロジェクトセカイに登場するキャラクターのうち、ピアプロキャラクターズ(初音ミク鏡音リン鏡音レン巡音ルカMEIKOKAITO)の二次創作に関しては、「キャラクター利用のガイドライン」「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」「ピアプロリンク」の3点によって定められているので、これら全てに従うこと。

ピアプロキャラクター利用のガイドライン(全般)

かなり細かく明文化されている。

piapro
piapro(ピアプロ)は、聞いて!見て!使って!認めて!を実現するCGM型コンテンツ投稿サイトです。

ピアプロ・キャラクター・ライセンス(二次創作関連)

要約は下記の通り。

クリエイターができること

  • 二次創作物をつくること
  • つくった二次創作物を公開、または配ること

クリエイターができないこと

  • 宣伝や広告のために二次創作物を使用すること
  • 他の人の作品を、自分のものと偽って使用すること
  • キャラクターの価値を下げるような使い方をすること
  • 他の人を不快にさせ、または傷つけるために二次創作物を使うこと

正文は下記ページにて。

piapro
piapro(ピアプロ)は、聞いて!見て!使って!認めて!を実現するCGM型コンテンツ投稿サイトです。
ピアプロリンクについて(収益関係)

個人や同人サークルが、営利を目的としていないものの、原材料費程度の対価を受け取って自ら小規模に配布するときのような趣味の範囲の利用について、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社は自社キャラクターの二次創作物の利用申請を受け付けており、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社による申請の受理を経ることで利用ができるのが「ピアプロリンク」。

二次創作内にピアプロキャラクター以外のキャラクターが含まれる場合、そのキャラクターの権利者に別途問い合わせする必要あり。

piapro
piapro(ピアプロ)は、聞いて!見て!使って!認めて!を実現するCGM型コンテンツ投稿サイトです。

プロジェクトセカイの二次創作について

二次利用・二次創作が可能な内容
  • イラスト・同人誌・マンガ・小説などの作成、展示、配布
  • フィギュアなどの立体物の作成、配布
  • コスプレ衣装(全年齢対象に限る)の作成、配布
  • キャラクターのコスプレ(全年齢対象に限る)、コスプレ写真・動画の公開、配布
  • ゲーム通常プレイで撮影された動画や静止画を用いた、プロジェクトセカイの内容紹介

※関連各社が開催するイベントでの展示・配布・撮影等に関して、各イベントの運営ルールにも従うこと

二次創作可能な条件
  • プロジェクトセカイが定義する非営利目的」の場合に限り、当該作品を題材とした二次創作物(同人誌・同人グッズなど)の制作・展示・配布等を自由に行える
  • 企業・法人格のある団体が二次創作活動を行いたい場合、または本ガイドラインの判断基準を超える二次創作活動を行いたい場合は、事前にプロジェクトセカイに問い合わせをすること
  • 企業・法人格のある団体の場合でも、通常プレイで撮影された動画や静止画を用いたプロジェクトセカイの内容紹介であれば、ガイドラインに定める禁止事項に抵触しない限り、制作・展示・配布等を自由に行える
非営利目的か否かの判断基準
  • 個人または法人格のない団体が、利益を得ることを目的とせずに二次創作物を制作する場合、「非営利目的」と推定
  • 趣味の範囲で利用し、原材料費やツール類など制作にかかった費用程度の対価を得る場合も「非営利目的の範囲内」とする
二次創作における禁止事項
  • 他人を不快にさせたり嫌な気持ちにさせるもの、他人を攻撃したり差別的な内容のもの
  • 他者の権利を侵害したり、侵害のおそれがあるもの
  • 政治・宗教・思想などを発信や勧誘をするもの
  • プロジェクトセカイのイメージを損なうもの
  • プロジェクトセカイの公式や運営者と詐称すること、プロジェクトセカイ公式の制作物であるかのように詐称すること
  • プロジェクトセカイで使用されている公式イラスト等のデータを二次創作内で使用すること
  • 各国の法令や公序良俗に反するもの
  • その他、本プロジェクトが不適切と判断したもの

※ガイドラインの内容は、予告なく変更する場合がある。ガイドライン改定によって損害が生じても、プロジェクトセカイは一切の責任を負わない

明示されたガイドラインの特徴

まず、どの二次創作ガイドラインにおいても概ね共通しているのが、

  • 原作のイメージを損なわないようにすること
  • 政治・宗教・信条を支援する、または貶めるものは禁止
  • 第三者の考え方や名誉などを害する、または第三者の権利を侵害しているものは禁止
  • 商業利用または営利を目的とすることは禁止制作費用の対価程度の回収であればOKという場合が多い)

といったところだろう。
いずれも、作品や他の一次創作クリエイターを守るために設けられたものと認識できる。

ウマ娘に関しては、今回のガイドライン改定で「商業利用または営利を目的とするもの(いわゆる「同人活動」の範囲を超えるもの)」が禁止事項に加わっており、これにより営利活動は実質的に不可能となった。
ただ、具体的にどのラインが許容されるのかが明文化されていないのが気になる点で、プロセカやプリセッションのように「制作費用の対価程度の回収であればOK」等のような文面によって、非営利か否かの基準を示すべきではないだろうか。
常識的に解釈するのなら「性的描写は一切禁止。一般描写作品の公開、及び一般描写作品での制作費用の対価程度の回収の収益の発生は認められる範囲」という感じなのだろうが…。

また、子供向け作品についてはプリセッションのような「飲酒・喫煙・賭博、その他未成年の成長に悪影響を与える可能性のあるものは禁止」やプロセカの「各国の法令や公序良俗に反するものは禁止」という部分も有効だろう。
子供向けのプリセッション、権利関係が大きく絡むウマ娘に関しては、ガイドラインで「性的描写」を明確に禁止している。

SNSやネットに流れてくる二次創作物を見ていると、

  • 政治系や他作等の発言を勝手に作品のキャラクターに代弁させている
    (スクリーンショット改変、手書き双方)
  • 原作の世界観やキャラクターの設定をガン無視しているものがある
  • 制作費用の対価程度の回収以上の明らかな収益を人様の作品(=二次創作物)で得ている場合がある
    (コミケ等各種販売イベント、通販、FanBox、Fantia、Skeb、その他)

などといった悪い例のものがちょくちょく見られる。
作品のイメージと大きくかけ離れており、先述のコスプレイヤーの件で述べたように、明らかに人様の一次創作物を勝手に私物化している
そういったものを供給する方は悪質だが、それを購入する方も割と悪辣だろう。

先でも述べた通り、二次創作者は一次創作物を「お借りしている」立場である。
原作のイメージを損なうような二次創作はすべきではないし、また人様の創作物を使って制作費用の対価程度の回収以上の明らかな収益を得るべきでもないだろう。
これらを守れないのであれば、それは最早盗作なのではないか。

先述の問題となったコスプレイヤーの件もあるので、プリセッションのように留意事項として「本コンテンツのクリエイターに経緯は払う」と明記する(二次創作側からコンテンツクリエイターに敬意を求めることは記述しない)ことも必要になっているのではないかと感じる。

一方、一次創作クリエイター側は自分が作ったコンテンツに関しては、不備がないようきっちり設定や想定などを整えておくことが重要。これに関しては、或る種のリスクマネジメントといえる。
ここで何かしらの穴があった場合は不測の事態が発生する可能性がある。こうなった時は素直に頭を下げて謝罪する他なく、ぼかして沈黙を通したり逃げる・拒絶は悪手中の悪手。
例えばプロセカの場合、一部楽曲やイベントストーリー、劇場版などの情報公開・リリース時に、矛盾性や杜撰な設定等により色々とユーザーからの猛批判を浴びているときがあった。

最後に

二次創作者は常に一次創作物及び一次創作クリエイター(原作者)に対して謙虚であり続けること、敬意を払うこと、作品を利用させていただくという意思・態度を忘れてはならず、また作者側の定めるガイドラインには必ず従わなければならない

それが嫌で従えないのであれば、二次創作をするのではなく、自分で作品を作って一次創作クリエイターとなり、一次創作で自分の思うがままに動けばいい
これらのことは二次創作をするうえでは当たり前のことであり、「面倒くさい」と思った人はもうその時点で二次創作は向いてないし扱うべきではない。

一次創作クリエイター側も、二次創作に関する大まかなガイドラインに関しては、上記3コンテンツのように大方の明文化をしておいた方がいいのではないかと感じられる。

二次創作ガイドライン以外にも、以前の記事で触れたようなアニメ等の映像作品のスクリーンショットに関する権利・取り扱いについても、各制作会社はきちんと明記すべきだろう。

プロセカはゲームコンテンツではあるが、ゲーム内3DMVやイベントシーンの映像、スクリーンショットの取り扱いに関してもしっかり明記しているので、やはりガイドライン関連はどのゲーム・映像作品よりもしっかり出来ていると感じられる。
ゲーム・映像を取り扱う各社は、プロセカのガイドラインを見習ってもいいのではないだろうか。

勿論、一般ユーザー側もプロセカの道徳的」とさえいわれるガイドラインはしっかり目を通しておいて損はないだろう。
プロジェクトセカイは子供向けの側面も持っているゲームであるため、そういったゲームの道徳的ガイドラインを守れないような大人はいないと思うが、先の記事での女児向けアニメのエピソードで取り扱われた権利問題を真っ向から破って、いろんな映像作品のスクリーンショットや漫画を貼り付ける情けない大人がいるのが現実。

こういった「見た目は大人・中身は子供」のようなユーザー達の杜撰・悪辣な行動で、二次創作全般が一切禁止の未来にならないことを願うばかり。



というより、




こんな当たり前のことが公式的に明示されていなくとも常に自ずとそういった意識の下で二次創作等を行うべき。

明示されてようやく守るあたりが既に盗人猛々しい
本当に「見た目は大人・中身は子供」としか言いようがない。

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